北京オペラブルース (★★★★★)

画像刀馬旦
Peking Opera Blues
1986年/香港

【監督】
 ◆徐克(ツイ・ハーク)
【脚本】
 ◆杜國威(レイモンド・トー)
【武術指導】
 ◆程小東(チン・シウトン)
【出演】
 ◆鍾楚紅(チェリー・チュン)
 ◆林青霞(ブリジット・リン)
 ◆葉[艸/倩]文(サリー・イップ)
 ◆鄭浩南(マーク・チェン)
 ◆張國強(K・K・チョン)
 ◆梁普智(リョン・ポーチ)
 ◆午馬(ン・マー)
 ◆曾江(ケネス・ツァン)
 ◆谷峯(グク・フォン)
 ◆田青(ティン・チン)
 ◆秦沛(ポール・チュン)
 ◆黄哈(ウォン・ハー) ◆李海生(レイ・ホイサン)
 ◆司馬燕(ミシェール・シーマー) ◆呉君如(サンドラ・ン)
 ◆苑瓊丹(ユン・キンタン) ◆田啓文(ティン・カイマン)

 中国への返還が正式に妥結された84年から天安門事件が起こる89年あたりまでというのはまさに香港映画の黄金期にあたる訳ですが、その頃に作られた作品の多くは97年を意識したもので、なかなか民主化されない中国への苛立ちや、返還への不安といったものがその活力の源であったのだと思います。この『北京オペラブルース』もそんな流れの中から出てきた一本で、徐克作品の中でも『上海ブルース』と双璧をなす傑作であります。

 この作品では京劇が重要な背景となっていますが、当時京劇の舞台には女性は絶対に上がる事が出来なかったという事で、これを封建社会の象徴として描いており、その京劇の舞台の上で三大女優を大活躍させてしまうというところがミソ。女性を自由の象徴として見るならば、男が女を演じる世界の中において自由はみせかけのものでしかなく、女形に夢中になる秘密警察の長官は封建社会(中国)がもたらすいびつさを体現していて、それが彼女たちの前に立ちはだかるという構造が実に見事です。映画の中でいつも林青霞が男装しているのも京劇の女形と対義的な意味合いを持たせる為のような気がします。

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 80年代の香港映画を代表する三人の女優(三人とも香港人ではないけど)がまたそれぞれに素晴らしく、彼女達を観るだけでも元が取れそうなほどの充実振り。各キャラも明確に描き分けられていてとても面白いです。お金に目がなく根無し草のような生活をしながら外国へ行くたいと思っている湘紅はまさしく香港人だし、京劇団という封建社会で北京語を喋りながら生活している白[女丑]は中国人そのもの。外国帰りで裕福な曹雲は華僑というところでしょうか。そんな事を意識しながら観ると更に味わい深いものがあります。

 ワイヤーワークを駆使した立体的なアクションも見応えあり。特に京劇小屋からの脱出には色々な意味合いが込められており忘れ難いものになっています。

 福岡市総合図書館にはこの映画のフィルムが収蔵されているので、機会に恵まれれば是非スクリーンで観て頂きたい作品です。

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